採用広報とは?手法や効果、内容ついて解説します
採用活動においては採用広告を掲示する方法が一般的に行われていますが、この他に「採用広報」という手法が存在します。(※「採用広告」については過去記事を参照ください)
まず「広告」と「広報」にはどのような違いがあるのでしょうか?
一般的に、広告とは「広告欄の使用料を支払うことでメディアに掲載してもらうこと」を意味しています。
一方で、広報とは「広告料などの費用を使わず、メディアに取り上げてもらうこと、もしくは自社ブログや採用サイトなどの自社媒体に掲載すること」を意味しており、似ている言葉ですが区別されています。
ここでは「採用広報」、つまり広告料を支払うことなく自社についての情報発信を行い採用へつなげていく方法について説明します。
この採用広報は2種類に分けられます。
1つ目はSNSで継続的に発信し続ける方法です。
SNSでは閲覧者の興味の有無や年齢層に関係なく発信・リーチすることができ、様々な層の目に留まりやすいため、企業の認知度を向上させることができます。
またSNSは新聞やテレビなどのメディアに比べると若者層の目に留まりやすく、将来的な母集団形成につながる効果も期待できます。
2つ目は自社ブログや自社採用サイト、YouTubeなどの媒体で発信する方法です。
これらの媒体に社内の様子や社員へのインタビューを掲載することで、現在の母集団に対して入社前/選考応募前から企業の雰囲気や社内文化ついて知ってもらうことができ、マッチング精度の向上や入社後の定着率向上につながることが期待できます。
また最終的には自社でのノウハウが溜まった採用スキームの広告および採用コストの削減にもつながると考えられます。
また、現在は売り手市場であることや働き方の多様化により転職によるキャリアアップを考える人が増えています。これによりキャリアアップを考える転職潜在層へのアプローチの有効性が高まっています。一部の企業では採用広報を活用し、自社を知らない層に企業を知ってもらうことや、企業の魅力を発信することで将来的に転職を考えるタイミングで思い出してもらえるようにアピールするなど、転職者の母集団形成を目的とした採用広報が行われるようになってきています。
このように採用広報を行う際、ターゲットと目的を明確にして情報発信していくことで将来的な採用に結び付くことが期待できます。
以下では、SNSや自社媒体を使用した採用広報について解説していきます。
採用広報で使用される媒体について解説します
採用広報にはいくつかの種類があることを説明しました。
その中でも、各媒体にどのような特徴があるのか、どのような発信に適しているのかを筆者の視点から解説します。
今の時代、近い将来に母集団となり得る若者世代にSNSの使用が浸透しており、SNSを使用して母集団形成を狙う手法が効果的になってきています。
まずは、採用広報として有効なSNS媒体を紹介します。
X(旧Twitter)
Xの特徴としては、幅広い世代に使用されていることや、若者層のユーザーの多さから、上手く扱うことができれば企業認知向上や母集団形成を同時に行える強力な媒体となります。一方で、1投稿あたりの動画・画像数や文字数に制限があるため、少ない情報でどれだけ拡散につなげてられるかが重要になります。
また、情報の拡散のされやすさは強力であるものの、不都合な情報が拡散されて炎上につながるリスクもあり、発信する内容をしっかり吟味した上で投稿する必要があります。
Instagram
文字でのやりとりもありますが、動画や写真を中心にしたコミュニケーションが主流であり、視覚的にメッセージを伝えられるという特徴があります。
また、複数画像や複数動画の投稿ができ、1投稿に記載できる文字数も多く、1投稿に記載できる情報量の圧倒的な大きさから使用する人が多いと考えられます。そのためSNSの中でも動画や写真を中心に閲覧・投稿する若者層の利用が多くなっている印象です。
Xとは異なり、拡散されるというよりは、注目の集まっている投稿が「オススメ投稿」として他のユーザーに表示されやすくなるという特徴があります。
Xに比べると企業アカウントは少なく、主にBtoCの企業が消費者に対するアピールに使用しており、他にも日常生活でのお役立ち情報などの発信でフォロワーを増やしているアカウントなどが見られます。
Facebook
日本国内ではXとInstagramに次ぐユーザー数であり、世界でのアクティブユーザーが最も多いという特徴があります。
世界的な認知の向上を狙うのであればFacebookは効果的もかもしれませんが、拡散されやすさを考えると他のSNSと比べると少し劣ると考えられます。
年齢層は他のSNSよりも高い傾向にあり、転職者をターゲットに採用活動を行う場合はFacebookを使用すると効果的かもしれません。
他社媒体
他社媒体として、WantedlyやLinkedInなどの活用も有効です。
このような媒体は、UI(ユーザーインターフェース)が採用活動向けに最適化されており、目的に沿った扱いをしやすい特徴があります。上記のSNSは地道なフォロワー獲得や拡散されるような工夫をして母集団形成を狙う一方で、これらの他社媒体は既にいる候補者に直接リーチすることができます。
即効性のある採用活動を行いたい場合は、就職活動をしている人に最短ルートでリーチできるこれらの媒体が適していると考えられます。このように目的に沿った広報を行える他社媒体を探し、使用を検討することも手だと考えられます。
これらのSNSは、広告とは違い、写真と文字の両方を使っての発信が可能で、社内の雰囲気が伝わるような投稿をするなど、広告ではできないアプローチでアピールすることができます。
しかし、SNSには社内の興味関心を惹くコンテンツを拡散できるという利点はあるものの、欠点として炎上のしやすさが挙げられます。
意図せず会社にマイナスな内容を発信してしまった場合、瞬く間に拡散されてしまうリスクがあるため、発信する際に内容をしっかりと吟味し、炎上につながらないことを確かめた上で発信していく必要があります。上手く拡散されるように内容を意識すれば、自社を知らない将来的/潜在的な母集団層に対して企業認知を高めることができ、中長期的な母集団形成につながることが期待できます。
一方で、このように若者にリーチできるSNSの使用の他に、ターゲットによっては採用広報として大きな効果を発揮できるいくつかの媒体があります。このようなSNS以外の媒体について説明します。
自社採用サイト/自社ブログ
自社独自のサイトを作ることができ、サイトの見栄えや読みやすさによっては学生の入社意欲につながることが期待できます。
また母集団に対しての発信になるので、ターゲットを明確にして適切な内容で発信することができます。
自社独自のサイトで発信することで、社内環境や社員について知ることができ、マッチング精度向上につながります。
YouTube
動画掲載サイトとしての地位を確立しており、どのような人でも視聴可能で、多数の視聴者に対して発信できるなどの特徴がある。
また、他のSNSでは過去の発信内容を遡りづらいのに対し、YouTubeでは過去の動画にリーチしやすく、尺の長い動画を掲載することができるなど他のSNSにはない特徴があります。
上手く動画を作り企業についてアピールできれば、自社について興味を持ってもらうことができます。YouTubeの難点としては、動画作成に人手や労力がかかることです。一方で近年はYouTuberやインフルエンサーとコラボすることで、広報効果を上げている企業が出てくるなど、フォロワー数増加の手間を省略して効率の良いアピールをすることが可能になってきています。
このように自社媒体で社内の雰囲気を積極的に発信することで、母集団に対して選考前や入社前に社内の雰囲気を知ってもらうことができます。
これにより採用におけるマッチング精度向上や採用後の定着率向上などが考えられ、結果的に自社採用スキーム構築、採用コスト低減が期待できます。
採用広報を効果的に行うポイント
採用広報を上手く行うためには、企業のターゲット層に対して、適切な媒体、適切な内容をしっかりと定めておく必要があります。
考えておくべきポイントとして、
・どのターゲット層に
(新卒・中途・年齢層・特定の分野に特化した人材など)
・どういう効果を期待して
(次年度/将来的母集団形成?企業認知向上?マッチング精度向上?入社後の定着率向上?)
・どの媒体で
(若者の認知向上ならSNS?母集団とのマッチング精度向上なら自社媒体?)
・どのような内容で
(事業紹介?社内の雰囲気?社員インタビュー?転職者の待遇変化や仕事内容の紹介?新卒入社した社員向けの新人研修の紹介?)
など、目的を定めて発信していくことが重要です。
例えば、「事業展開するために人員補充したい。経験者が欲しく中途採用での人員補充を考えている」という企業を仮定してみます。このとき、
・ターゲット:経験者、転職しようと考えている層
・期待する効果:今の会社よりも待遇の良さや、できることの豊富さなどが伝わる
・媒体:自社採用サイトとTwitterを組み合わせる。Twitterで転職潜在層に対して企業認知を高められるようにし、リンクを貼って自社採用サイトへ誘導
・内容:「好待遇」「高権限」「経験者募集」「前職の経験を活かせる」などのアピールや、直近で転職した人がどのような企業から転職し、待遇の変化や仕事内容の変化など、転職を考えているにとって魅力的な内容で投稿。転職経験者の体験談を、ブログやYouTubeに公開することで自社を知らない人の参考にしてもらう。
以上のような内容を基本として発信してくことが考えられます。
他にも「長期的な計画として新卒予定/第二新卒層に対する母集団形成を行い、将来的な就職・転職先の候補に入るような施策を行いたい」という企業を仮定してみます。
すると考えられる内容は
・ターゲット:現在の学部や修士で在籍している大学生、大学卒業後数年経過しており転職を視野に入れている若者層
・期待する効果:企業認知の拡大、企業として行っている事業の紹介、入社することにより身に付けられる技術など成長できる環境であることの認知拡大
・媒体:認知拡大のために若者層が良く使用しているSNSの活用、新卒/転職者向けの自社採用サイト
・内容:多くのターゲット層の目に付くようにSNS広告の使用や、SNSで社内の雰囲気を発信しつつ、自社採用サイトにも同様の内容を載せる。自社のアピールポイントなどを分かりやすく掲載する。
というような内容が考えられます。
このように、漠然と採用広報を行うのではなく、目的に合わせてターゲットや内容を明確にして発信することで、採用広報の効果は大きく上昇するでしょう。
広報(採用広報)を上手く活用している企業の事例
最近の若者世代はSNSを見る頻度が高くなってきています。これは情報収集や日常会話の媒体がテレビや新聞から電子媒体(主にスマホで見るSNSやPCのニュース欄など)に移り変わってきているためであり、広報としてのSNSの活用は、これからの時代に適応するために重要な戦略となります。
ここでは筆者の観点から、時代の流れに合わせ、広報を上手く活用している企業を紹介します。
SHARP(X/旧Twitter)
2023年9月時点で83.6万人のフォロワーを持つなど、企業アカウントとしては最も上手くSNSを活用しているアカウントの1つです。
企業アカウントとしては珍しい人間的な対応をすることで一気に有名になり、その後も定期的に投稿が拡散され、着実にフォロワー数を増やしているアカウントです。
パイン株式会社(X/旧Twitter)
担当者の人間的な投稿や、野球関連の投稿でフォロワーと交流するなど、フレンドリーな対応をすることで、2023年9月時点で18万人ものフォロワーを獲得し、製菓メーカーとして定期的に自社の看板商品の賞味方法を紹介するなどの広報につなげています。
ニトリ(Instagram)
自社製品を、写真だけでなく興味を惹くようなサムネイルを用いて定期的に投稿/紹介することでフォロワーを獲得し、2023年9月時点で136万人ものフォロワーを獲得しています。また、インスタグラム特有の機能であるストーリーという投稿の仕方も有効に活用し、顧客からの質問の回答やお客様サポートの案内、ニトリアプリの紹介からライブ配信の案内など、様々な情報を見やすくまとめており、広報として上手く活用している良い例となっています。
サイバーエージェント(Instagram)
サイバーエージェントはInstagramで新卒採用アカウントを運用しており、新卒内定者インタビューや先輩社員インタビュー、事業紹介、選考応募から内定までの段階やそれに対するアドバイスなど、新卒予定学生の知りたい情報が1つ1つの投稿にまとめられています。このように新卒予定学生向けにターゲットを絞ったアカウントを運用している企業もあります。
また、サイバーエージェントは『Cyber Agent Way』というオウンドメディアでの情報発信も積極的に行っており、広報(採用広報)を上手く行っている企業のお手本となるかと思います。
これらの企業はSNSやオウンドメディアを広報に上手く活用することで、企業認知向上や採用につなげています。これらの活用方法を参考にすることで、自社の広報活動の成功の近道となるのではないでしょうか。
最後に
採用広報は、今の若者層向けにSNSを使用することや、母集団向けに自社採用サイトを充実させるなど、上手く使いこなせば母集団形成において大きな効果があります。このように目的を定め、有効な手法を取り入れていくことが採用に直結すると考えられます。
サイシードでも詳細をヒアリングし、各社目的を定めた上で採用広報のご提案が可能です。
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