文系学生よりも理系学生を採用することが難しい理由は?
近年は、日本人の人口が減少傾向にあるため、理系学生の母数が減っていて採用が難しいと考えるかもしれません。たしかに長期では少子化の影響もあり、若者(大学生)の数が減少することは避けられないトレンドです。しかし、文部科学省の「文部科学統計要覧(令和2年版)」によると、日本の大学生の数は2017年で約289万人、2018年で約290万人、2019年で約291万人と微増傾向のため、人口の減少は理系学生の採用の難しさに、現段階では影響はないといえるでしょう。
では、なぜ理系学生を採用するのは難しいのでしょうか。まずは、その理由をご説明します。
理系学生の需要が増加している
理系学生は企業からの需要が高いため、売り手市場です。2020年のコロナ禍以降、一部の業界では採用控えなどが起きていますが、理系学生の需要は結果として、これまで以上に増加傾向にあります。
日本経済新聞社の「2022年春入社の新卒採用計画調査(1次集計)」によると、企業における大卒の採用計画は、2021年春の実績見込みに比べて4.4%増加しています。旅行や鉄道・バス業界では減少しているものの、新卒採用の増加は平均値としては、12年連続プラスになっているのです。
中でも、電気自動車やデジタルで新しい事業領域を伸ばそうとしている電機系企業では、採用枠を10.8%増で計画しています。採用枠増加の理由のひとつとしては、日本政府が2050年までに温室効果化ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の実現を掲げているため、特に自動車業界の企業では理系の人材確保に力を注いでいるからです。
ほかにも、研究開発や製造を行うメーカー、IT企業などからも、依然として理系学生の需要はあります。また、理系学生は、コンサルタントやデータサイエンティストのほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進人材、AI人材としても適しているため各業界からのニーズが高く、今後ますます需要が高まっていくでしょう。
理系学生は大学院へ行くケースが多い
理系学生の採用が難しい理由として、理系学生は文系学生よりも大学院に進級する割合が高いことが挙げられます。
文部科学省「令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について」によると、2019年の大学卒業者57万2,639人のうち、6万5,355人(11.4%)が大学院に進学しています。
前述のデータによると、教育学部や人文科学部の学生で大学院に進学したのは約3~6%なのに対し、理学部では約40.8%、工学部では36.4%の学生が大学院に進学しています。
このように、理系学生は大学卒業後、大学院に進学することで自身の研究分野を深めていく比率が文系よりも多いです。
大学院生であれば、学部生よりも自身の研究関連の分野での就職を重視する傾向が強いです。
このように、学部生か大学院生かでアプローチすべき打ち手は変わってきますので、こうした特性を考慮する必要があること点も理系学生の採用の難しさにつながっているといえるでしょう。
大学や教授からの推薦を受ける学生が多い
理系学生は、大学や研究室の教授の推薦で就職先を決める傾向があります。教授が推薦してくれた企業は、興味のある研究対象であることや、同じ研究室の先輩が入社していることが多く、学生としても安心して選べることが理由として挙げられます。そのため、推薦された企業以外をあまり調べることなく、就職先を確定させてしまうことも少なくありません。
このような背景には、少なからず理系学生が多忙であることが影響しています。理系学生は、大学の講義やレポート提出のほかに、研究室での活動によって夜遅くまで時間が取られてしまいます。そのため、文系学生のように時間をかけて企業研究をしたり、インターンに行ったりすることが難しいのです。
理系学生の特徴は?
企業からの需要が高い理由には、理系学生の特徴が関係しています。ここでは、その特徴を詳しく見ていきましょう。
数字に強い
一般的に、理系学生は数字に強いといわれています。これは、大学受験時に数学ができなければ合格できないという背景はもちろんのこと、仮説設計から検証まで数字を使った研究やレポート作成を日々行うことで、さらに数的処理能力が磨かれることが理由に挙げられます。
数字に強いということは、研究開発や設計における数値測定と検証のほか、財務管理、経営分析など、活躍できる裾野が広くなるといえるでしょう。
メンタル面が強い
理系学生は、メンタルが強いことが特徴に挙げられます。研究室では、仮説を立てて実験、その後は検証や改善といった試行錯誤を繰り返し行うため、忍耐力が必要です。
このように、理系学生は何度も物事に取り組むことで、文系学生よりもメンタルが強いといわれています。
論理的思考ができる
研究室での実験では、間違っていれば再び仮説を立てて検証します。論理的志向に長けていれば、社会人になっても検証や改善を必然的に行うため、スピーディーにPDCAサイクルを回すことが期待されています。
理系学生の志向を知り、アプローチ方法を練ろう
前述した特徴だけでなく、理系学生は文系学生とは違う志向を持っています。採用担当者としては、そのあたりを理解した上で、理系学生に届くようなアプローチをする必要があるのです。
続いては、理系学生を採用するために知っておくべき、理系学生の志向を見ていきましょう。
研究室を中心に学生生活を過ごす
理系学生は、研究室に配属されるとほとんど毎日研究室に通うようになります。
また、学部4年生や修士2年生など卒業学年になると、研究発表や論文提出に向けて朝から晩まで研究室づけになる学生も少なくありません。
また、研究室は学部3年(場合によっては学部4年/修士1年)から配属されてから、卒業まで数年間同じ研究室に通います。よって、研究室内で教授や先輩・後輩との関係値はかなり深い関係値になっていきます。
そうした背景もあり、理系学生は自分が信頼する教授や先輩から聞く「リアルな」就職活動の情報や企業情報を信頼しており、研究室で入手した就職情報や企業情報を信頼しているのです。
研究に打ち込める大手企業への就職志向が強い
理系学生は、大手企業への就職志向が強いです。その理由は、給与や福利厚生などの待遇のほかに、大手企業のほうが研究開発資金や充実した研究施設があるからです。大手企業なら整った環境下で、自分が携わってきた研究を進め、商品開発につなげていく魅力があります。また、前述したように、学生生活の多忙さから企業研究をする時間がないため、結果的に名前の通った企業を選ぶという影響も少なからずあるかもしれません。
一方、自分が研究したい内容であれば、企業規模は関係ないという人もいます。
研究分野を活かした職種へ進む
理系学生は、研究分野を活かした職種へと進む人が多いです。研究室に入ると、その研究の延長線上にある企業に就職するというのが当たり前という風潮が大学内にあるからです。特に、上位校であれば、研究室と大手企業が密接な関係になっていることがあります。そのため、研究室からいくつか企業を紹介してもらい、その中から気に入った企業を選ぶことが多いです。
また、売り手市場である現在では、優秀な理系学生を採用するために、企業側は大学への推薦募集の枠を増やしています。そのため、理系学生にとっては志向性に合った、行きたい企業をみずから選ぶことができる環境に、ますますなっているといえます。
仮に、理系学生みずから就職活動をするにしても、前述した当たり前を意識して、研究の延長上にある職種を見つけて応募していくようです。
ですが、研究室に所属したものの、その分野がおもしろいと感じられなかったり、学生生活でさまざまな経験をする中で価値観が変わったりする場合は、研究とは異なる就職先を考えるという人も、一定数います。このタイプの学生は、IT企業などで、理系としての知識や素養を応用できる職種を選択することが多いでしょう。
また、コンサルタントなどの職業を希望する学生は、次の2つのタイプに分かれます。
1つ目は、低学年の頃からインターンシップに参加したり、起業したりして能動的にビジネス経験を積み、プロフェッショナルとしてのキャリアを磨くことに関心のある、意識が高い学生層。
2つ目は、就活期に自己分析を重ねる中で、技術者としてのキャリアパスに疑問を持ち、理系としての素養を活かる場としてコンサルタントという職種に関心を持った層です。
いずれのタイプも、就活サイトなどを利用して積極的に就活を行い、これから伸びる業界かどうかといった情報を集め、自分が理想とする企業や職種を見つけていきます。
勤務地よりもやりたい職種を優先する
勤務地に関しては、場所はいとわないという理系学生が多いようです。これは、勤務地よりもやりたい職種かどうかや、企業名、研究施設の規模が優先されるからです。専門家や技術者として就職する以上、地方の施設に勤務するリスクは覚悟の上という傾向があります。
理系学生が就職活動で動き出す時期は?
理系学生が、推薦ではなく自己応募で就職活動をする場合、動き出す時期は大きく3つに分かれます。
自社をアピールするタイミングを逃さないためにも、理系学生が動き出す3つの時期を確認しておきましょう。
夏のインターンシップ募集解禁
大学3年生の6月1日から、夏のインターンシップの募集が解禁されます。
特に、外資系やコンサル、IT系など、早期選考を行う企業を希望する理系学生は、インターンシップに参加する傾向があります。これは、企業が夏のインターンシップで囲い込みをするために、参加したほうが選考につながりやすいという通説があるからです
また、昨今では大手日系企業も夏のインターンシップに注力しており、1週間~数週間程度のスパンを切って、インターンシップを開催しています。学生から、「1dayインターンシップ=説明会」と揶揄される風潮がある中で、元々のインターンシップの意義である就業体験や業界・企業理解の場を提供することで、参加した学生同士が仲良くなり、就活の仲間を作る場としても機能しています。インターンシップは、企業と学生の双方にとって有効な場となっているのです。
このような背景の中で、特に上位校を中心にどの業界を志望する学生も、まずは夏のインターンシップを数社受けて、就職活動を始めるという流れも一つのポイントになってきています。
10月以降の就職ガイダンスや業界研究セミナー開始
大学3年の10月以降で、大学の就職ガイダンスや業界研究セミナーのほか、民間事業者によるインターンシップ紹介セミナー、企業主催の秋冬向けのインターンシップが始まります。
理系学生の場合、夏に論文や学会の対応を迫られて、インターンシップに参加できていない層や周りの学生が動いているのに影響を受けて、この時期に動き出すことが多いでしょう。また、夏から動き出した学生も、さらなる業界研究や企業研究のために、積極的に動く時期です。
近年では、ダイレクトリクルーティングや就活情報サイトなどの情報収集ツールが多角化しています。また、企業のインターンシップのオンライン化や1day開催が増えたことにより、学生からすると選択肢が広がっているのです。とはいえ、この時期の学生は授業や研究のほか、アルバイトの合間をぬって限られた時間の中で就活していることに留意する必要があるでしょう。
こうした市況を踏まえて、自社にとって最適なアプローチ方法を模索する必要があります。
3月1日の就活解禁日(広報活動解禁日)
政府により指定されている3月1日の就活解禁日から、企業側の広報活動が開始されます。
また、大学3年(修士1年)の3月1日に合同企業説明会などが行われることもあるため、ここまでに動き出さなかった学生も、この時期から動き出します。
この時期の学生は、業界理解や自己分析などが進んでいない反面、特定した企業との接点が薄いため、3月以前に動き出した学生よりも、選考につながりやすい特性があります。
理系学生を採用するために企業が行うべきこととは?
理系学生のすべてが、推薦で就職先を決めるわけではありません。前述したように、みずから就職活動をする学生もたくさんいますので、大手だけではなく、どの企業にも理系学生を採用するチャンスはあります。
しかし、理系学生は主に研究室の教授や先輩の話を参考にするため、積極的に情報収集する人が少ないのです。そのため、企業側が積極的にアプローチをして、自社のことを知ってもらうことが大切です。
具体的に、理系学生にアプローチをする方法としては、合同説明会や就職情報サイトへ掲載することなどがあります。
また、忙しい理系学生でも参加しやすい、オンライン説明会を開催するのもおすすめです。
しかし、このような方法では、理系学生の母集団は形成できても、「機械系の学生が欲しい」「電気系の学生が欲しい」など、自社が望む理系学生を集められるかどうかはわかりません。
そこで、直接アプローチするダイレクトリクルーティングや、ターゲット限定型のイベント参加だけでなく、
理系学生の特性を考慮して、研究室訪問を実施するといった自社のターゲット学生に絞ったアプローチを検討することをおすすめします。また、内定後は内定者懇談会を開催したり、内定者研修などでフォローしたりすることも大切です。なお、アピールする際に自社の新入社員や同じ大学のOBやOGを紹介することで、理系学生が実際に働いている人を見て、将来の自分の姿をイメージさせることもポイントのひとつになるでしょう。
理系学生へのアプローチは、採用支援会社の知見とツールを活用するのがおすすめ
理系学生を採用するために必要なのは、自社が募集したい理系学生に向けて、企業PRすることだといえます。
新卒採用支援事業や理系学生用のイベント企画・運営などを行っているサイシードでは、企業様のニーズに合わせて、理系学生へのさまざまなアプローチ方法のご提案が可能です。例えば、サイシードでは、全国1万4,000件という研究室のリストを持っており、研究室に求人票や採用パンフレットなどを送ることができます。もちろん、「MARCH以上の大学」「機械系」といった大学や専攻などによるフィルタリングも可能です。
理系採用の鉄板。高滞在率の研究室を狙って深いリーチを!
研究室内媒体
また、理系学生に企業の魅力を効果的に伝えるための媒体として、就職情報誌を発行し、全国の大学・研究室に配布しています。さらに、理工系や機電情専攻限定といった理系イベントも開催しております。
一部の大学にデジタルサイネージを設置したり、学食のトレイに広告を掲載したりすることもできます。
大学構内という、理系学生の目にふれる環境で自社を案内することで、インターネットなどで情報収集しない層にまで、きちんとアプローチできます。
ターゲット校へのブランディングに最適。認知·興味喚起からアクションへとつなげる。
大学内媒体
コロナ禍でオンラインでは差別化できない、ターゲット対象の学生にリーチできない、採用担当、OB・OGやリクルーターなども大学訪問ができないなどを背景に、理系学生の特性を把握したアナログな研究室内・大学内媒体はにわかに注目を集めています。サイシード提供の理系採用対策サービス資料は以下のフォームからDLが可能ですので、是非ご活用ください。
広島県商工労働局主催で理系新卒採用戦略オンラインセミナーを実施しました。