「母集団は形成できても、面接に進む人が少ない」「満を持して内定を出しても、辞退されてしまう」。
自社の採用に関わる人なら、そうした採用フローの中で各フェーズへ進む人数の低下、ボトルネックに悩むことがあるのではないでしょうか。
企業の採用計画を達成するために、採用における「歩留まり」の考え方を把握し、採用の歩留まり率の改善を図ることは必須です。
ここでは、新卒採用における歩留まり率の種類や計算式を紹介。歩留まり率が悪化してしまう原因やその理由、改善方法についても解説します。
採用における歩留まり率とは、各フェーズにおける人数の割合のこと
歩留まり率とは製造業でよく使われる用語で、原材料に対して最終的な生産数量の割合を示します。
採用での歩留まり率とは、採用フローにおいて、各フェーズに進んだ、または辞退した人数の割合のことです。
主に新卒一括採用において用いられ、各フェーズにおける通過者が多ければ採用の歩留まり率は高く、通過者が少なければ歩留まり率が低いとなります。
採用における歩留まり率が悪いフェーズがある場合は、そこを問題点として改善を模索する必要があるのです。
企業や採用手法によって多少異なりますが、一般的な新卒者のフローを例に、詳しく解説します。
<新卒者の入社までのフローの例>
フェーズ1:プレエントリー
↓
フェーズ2:会社説明会の予約(本エントリー)
↓
フェーズ3:会社説明会参加
↓
フェーズ4:書類選考、筆記試験
↓
フェーズ5:面接(一次、二次…最終)
↓
フェーズ6:内定
↓
フェーズ7:内定承諾
↓
フェーズ8:入社
就活ルールの状況
例えば、フェーズ3の会社説明会参加からフェーズ4の書類選考に進む過程の歩留まり率が低いとします。
この場合、フェーズ2までは採用広告などで何らかの魅力を感じたものの、会社説明会で話を聞いて辞退する人が多いと判断できます。
このことから、会社説明会のコンテンツやプレゼンの仕方、プレゼンの内容などに改善の余地があることがわかるでしょう。
採用における歩留まり率の悪いフェーズを重点的に見直すことで、最終的に入社に至る人を増やすとともに、その質を担保することができます。
すなわち、採用において歩留まり率は、採用プロセスのボトルネックを見つけるための指標になるということです。歩留まり率を改善することは、採用活動を成功に導くために欠かせない手法といえます。
主な採用の歩留まり率の種類と計算式
採用において歩留まり率の基本的な計算式は、「選考通過者数÷選考対象数×100」です。
しかし、歩留まり率は各フェーズに存在するため、歩留まりの状況をチェックする場合、エントリーから入社までのすべてのフェーズにおける歩留まり率を洗い出す必要があります。
ここでは、主な採用における歩留まり率とその計算式を紹介します。
説明会予約率
説明会予約率は、プレエントリーから本エントリーへ移行する割合のことです。
新卒採用を行っている企業のほとんどは、自社の採用ページを設置し、採用ページの利用に必要な個人情報の登録を求めます。この登録のフェーズがプレエントリーです。プレエントリーをした学生は、説明会やセミナーなどの情報を受け取ることができます。
対して本エントリーは、説明会やセミナーの情報を見て、実際に予約することです。
プレエントリーは情報収集段階なので、学生は比較的気軽に登録します。少しでも気になる企業があれば、業界や業種、職種にそこまで興味がなくても、「とりあえず情報だけもらっておこう」と考える学生が多いでしょう。
そのため、プレエントリーの数だけでは、最終的に採用したい人数を達成できるかどうかを予測することができません。本エントリーに進んだ人数を確認して説明会予約率を出すことにより、採用目標の達成に必要なプレエントリー数の目安がわかります。
<説明会予約率の計算式>
説明会予約率=本エントリー数÷プレエントリー数×100
説明会参加率
説明会参加率は、本エントリー後、実際に説明会やセミナーの参加、一次選考といったフェーズに進んだ割合を指します。
ここからは、実際に企業の担当者と接することになります。この数値が、学生が自社への興味を示している指標ともいえ、この段階で学生が多く離脱してしまうと、採用につながる可能性が高い「母集団」を形成することができません。
本エントリーした学生に対して日程を知らせるメールを送ったり、オンラインの説明会や面接を選択肢に加えたりして、参加を促すことが重要です。
<説明会参加率の計算式>
説明会参加率=説明会参加者数÷本エントリー数×100
面接通過率
一次面接から二次面接、二次面接から三次面接、三次面接から最終面接など、面接から次の面接に進む人の割合が面接通過率です。
一次面接であれば、コミュニケーション能力を含めた第一印象や社会人としてのマナーなど、基礎的な部分を見ることが多いでしょう。二次面接、三次面接に進むには、「企業理解の深さ」や「志望度の高さ」「社風とのマッチ度」「ビジョンの明確さ」などを兼ね備えている必要があり、採用担当者が見るべき項目が飛躍的に増加し、歩留まり率は低下します。
面接フェーズごとに面接通過率を出すことにより、求める人物像に合った学生にアプローチできているかどうかや、見極めに問題がある面接を把握することができます。
<面接通過率の計算式>
面接通過率=面接通過者数÷各面接参加者数×100
途中辞退率
初回の面接や、次の面接へ進む過程で学生から辞退される割合が「途中辞退率」です。面接通過率とは異なり、学生から離脱した割合であることに注意が必要です。ほかの採用の歩留まり率とは異なり、この数値は高いほど悪いといえます。
途中辞退の理由として、「他社への志望度が高まった」「他社から内定が出た」といったことが考えられます。
つまり、途中辞退が起きたフェーズで、学生は自社と比較した上で他社を選んでいることがわかります。
どの段階の面接で途中辞退者が多いのかを把握することで、面接の内容や担当者、自社の魅力の打ち出し方などを見直すことができます。
<途中辞退率の計算式>
途中辞退率=途中辞退者数÷各面接参加者数×100
内定率
本エントリーした学生のうち、何名が最終的に内定に至ったかを表すのが内定率です。
<内定率の計算式>
内定率=内定者数÷本エントリー数
近年では、オンラインのインターンシップや選考面接が定着して採用活動の前倒しが進み、4月の時点で内定を得る学生が増えました。ただし、内定を得た学生のほとんどはその後も就活を続けており、内定率の高さが入社に直結するとは限りません。
内定承諾率
内定承諾率は、内定を出した学生が辞退せず承諾する割合です。
内定承諾率が高い企業は、求める人物像に合った学生を集めた上で、面接を通じて学生の入社意欲を醸成できているといえます。つまり、内定承諾率が高いほど採用力があるといえるでしょう。
<内定承諾率の計算式>
内定承諾率=内定承諾者数÷内定者数×100
内定承諾率が低い場合は、他社に比べ、自社に入社するメリットが低いと感じる学生が多く、競合に負けている可能性が高いと考えられます。この場合、学生に伝えているメッセージについて、根本的に見直すことも必要です。
歩留まり率が悪化する原因とは?
ここからは、特に注意したほうがいい歩留まり率の種類についてご紹介します。各フェーズの歩留まり率が低すぎる、または高すぎる場合は、原因を探ることが大切です。
説明会予約率:求める学生の目にふれる広告が出せているか?
プレエントリーは、学生にとっては単に「企業に興味を持っていること」を示すものなので、それほどハードルの高い行動ではありません。
しかし、会社説明会や就職セミナーなどの予約にあたる本エントリーでは、志望理由や自己PRなどが求められるため、志望度の低い学生はどうしても及び腰となり、説明会予約の段階で離脱してしまいます。
企業にとっては、採用の目標人数達成に向けて母数を確保するための最初のステップであるため、説明会予約率は非常に重要な項目です。説明会の予約率が低い場合は、そもそもターゲットの目にふれるよう広告を出せているのか確認が必要です。
説明会参加率:予約してくれた学生に自社をアピールしているか?
説明会参加率は、実際に企業に足を運んだり、企業で働く人と会ったりする会社説明会の参加や一次選考に進んだ学生の割合です。
このフェーズに進む学生は、自社への関心の度合いを考えて会社説明会などへの参加を検討するため、説明会予約率以上に歩留まり率は低下しやすくなります。説明会予約数が多く母集団形成に成功しそうに見えても、会社説明会になると参加者が減るのはそのためです。
会社説明会に参加した人は、多少なりとも企業に関心を寄せているので、まずはここを取りこぼさないことが大切です。説明会の予約をしてくれた学生に対して、適切に自社のアピールをしていくことを心がけましょう。
途中辞退率:学生に嫌厭されていないか?
途中辞退率は、さまざまな要因で上がります。例えば、面接を希望して日時を設定したものの、直前辞退やドタキャンで面接実施に至らないことは珍しくありません。会社説明会に参加したものの、会社や事業の説明不足で志望度が低くなり、面接に行く意義を感じなかった場合や、面接で企業が自分を評価してくれた理由がわからず、戸惑った場合などに選考を辞退する可能性があります。
面接になると、学生は会社の雰囲気を肌で感じ、面接官の対応から働く人の人柄や社風を推測します。
昔ながらの「企業が学生を選ぶ」傲慢な姿勢や威圧感のある面接、入社を強要する言葉などは学生に嫌厭され、途中辞退率を上げる原因になります。
また、選考フローが長すぎたり、面接の設定や連絡が遅かったりすると、内定出しまでのスピードが早い企業に優秀な学生を奪われ、この場合も途中辞退率が上がります。
新卒の場合、1社に的を絞って就活をする学生はほぼいません。多くは、数社の選考を同時に進めているはずです。就活を長引かせたい学生はいませんから、他社から先に内定が出たことを理由に辞退するケースがあります。
面接通過率:学生とのミスマッチが生じていないか?
面接の段階では、企業が意図的に学生を絞り込むので、面接通過率はどうしても低下しがちです。
面接に至ったにもかかわらず、自社が想定していた人物と出会えないため極端に面接通過率が低い場合は、学生とのミスマッチが生じています。
「欲しい人材の設定が行われていない」「求人情報の打ち出し方やアプローチの手法などが間違っている」「担当する面接官のスキルにばらつきがある」といったことが、面接通過率低下の原因となっているかもしれません。
内定承諾率:内定者と信頼関係を築けているか?
内定承諾率の低下は、最終的な目標である内定数に直結します。内定承諾率が低下している場合、ほかに内定が出た企業と比較して他社を選んでいたり、企業との信頼関係が築けていなかったりする可能性があります。
経営が安定しているとはいえないスタートアップ企業などでは、親などの強い反対が内定を断る理由になることもあるでしょう。
採用における歩留まり率悪化を改善するには?
悪化が顕著な歩留まり率と悪化の原因がわかったら、できるだけ早く改善を図りましょう。続いては、ボトルネックとなりがちな途中辞退率と内定承諾率の改善策をご紹介します。
途中辞退率:適切な動機づけを行う
「なぜ自分が評価してもらえたのか?」は、誰もが知りたいポイントです。
企業が自分の何に魅力を感じているのか、どんな成果を望んでいるのかを知ることができれば、自己肯定感が高まり、入社後に活躍するイメージを持ちやすいでしょう。
面接を通過したタイミングで下記のような内容を伝えて、途中で辞退されないようにしましょう。
<学生に伝えると良いこと>
・評価したポイント
・期待していること
・身につけられるスキル、経験
・考えられるキャリアイメージ
内定承諾率:内定者へのフォローをまめに行う
内定前後のフローがあまりに長かったり、日程調整に時間がかかったりすると、学生は不安や疑問を抱き始めます。
「早く決めたい」という心理も手伝って、スムーズに連絡をくれる企業に気持ちが流れるのは当然です
。内定を出したときにはすでに学生の気持ちが離れ、手遅れになりかねません。可能なら、選考フローを見直して、短縮できる期間があれば実施してください。
しかし、選考期間の短縮が難しい場合は、採用ブランディングが有効です。
採用ブランディングは、採用したいターゲット層に向けて、イメージに合わせた採用活動を展開し、共感や信頼感を覚えてもらう戦略的な採用活動のことです。自社で働くメリットやおもしろさなどを、競合と比較した場合の優位性になるよう、丁寧に伝えましょう。
サイシードの採用ブランディングで、歩留まり率を改善へ
採用における歩留まり率の悪化を抑える上で、企業の特徴や魅力を知って理解を深めてもらうことには、とても意味があります。
学生が「この会社で働きたい」という強い意思を持って志望してくれれば、最初から競合と差がついた状態で選考を進めることができ、採用につながりやすいからです。
学生に対する企業の認知度を高めるには、滞在率の高い研究室を狙って訴求する「研究室媒体」のほか、
学食内広告やデジタルサイネージといった効果的に学生へ印象づける「大学内媒体」など、サイシードのサービスが有効です。
ンターゲットが異なります。
理系採用の鉄板・研究室対策。ターゲットへピンポイントでリーチ可能
研究室内媒体
ターゲット校へのブランディングに最適。認知促進・興味喚起ができる
大学内媒体
学生に深くリーチできるサービス資料集一覧は、以下のフォームからダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。